2010年05月08日

社会起業支援サミットのまとめー三輪

(1)概況
 今回取材をさせていただいた社会起業家は、人間関係、農業、アートを通じた子ども支援、アートによるまちづくり、環境、子どもと親支援など、地域に潜む数多くの課題を、1つ1つ自らの視点で取り上げ、解決へ向け事業化している。事業化にあたっての企業形態は、NPO法人が4団体、有限会社・合同会社が2社となっているが、宮崎においてはNPO法人が主流のようである 。そのNPO法人の中には、全国的に名を馳せるNPO法人も存在している 。団体の規模は、従業員4名から55名までと幅があり、活動年数も半年から10年超まで幅がある。

(2)「想い」を「仕事」にするための課題
 社会起業の大きな柱である「事業化(ビジネス化)」という視点でみると、以下の3点の問題点が指摘できよう。第一に、活動資金確保の困難さである。活動年数が短い団体については、その活動資金を得ること自体が難しいという意見が寄せられた。とりわけ、社会起業家そのものに対する資金獲得方法としては、通常の会社設立時と同様、自己資金や親族からの借入れ、日本政策金融公庫等からの借入れ、他金融機関からの借入れなどのほか 、いくつかの団体による助成金 、本年初めてなされた内閣府による補助金 等のみである。活動年数がある程度経過している団体であっても、行政による補助金や委託金、行政他団体による助成金に頼らざるを得ないという意見も寄せられた。また、販売やサービス提供、場所の貸し出し等によって、収入を得ている団体もあるが、これらの収入のみで活動を続けることは容易ではない。
 第二に、人材不足という点である。「想い」を共有しつつ活動できる人が見つからない、あるいはそういった人を育てていく必要がある、と考える団体は多い。活動規模が大きくなればなるほど、人材育成が急務だと考えている。
 第三に、上記のような資金、人材に関する問題を解決し、諸団体との連携を進め、市民活動から事業化を図り、人の雇用へつなげるコーディネーターの不足である。市民活動に関しては、先に掲げた宮崎市民活動センターや宮崎県ボランティアセンター といった場所やサイトが存在し、助成金・補助金情報が随時更新され、ボランティア登録等の人材の情報の一元化も図っている。一方、起業・創業支援に関しては、企業立地、中山間地域の雇用創出等幅広い分野について宮崎県商工観光労働部 や、SOHOや製造業のマッチング、助成金情報等について財団法人宮崎県産業支援財団 、起業セミナー等について宮崎県商工会連合会 等が存在し、利用できる融資制度や助成金の情報、起業や経営に当たってのアドバイスや連携が充実している。しかしながら、市民活動と起業・創業をつなぐ機関やコーディネーターが存在せず、それぞれがそれぞれに独立している状況である。取材した団体の中にも、この活動で食べていける人を出すこと、ボランティアではなくきちんと雇用につなげていくこと、を課題としている団体は多く、宮崎の社会起業家にとって、想いを仕事にするための課題は上記3つに集約されるであろう。

(3)課題解決のために
 上記3つの課題を解決するために、いくつかの動きがでてきている。第一に、先般、宮崎県生活・協働・男女参画課は、「ひむか恊働見本市」と称して、行政、市民活動団体、企業が一同に会し、福祉・教育・環境などの地域課題について恊働で取り組めるよう、商談会形式の見本市を開催し 、地域課題の解決のためにあらゆる人・団体が連携、恊働していく機会を呈している。第二に、宮崎県生活・協働・男女参画課主催により「『新しい公共』のこれからを考える―多様な主体の協働・連携を考えるフォーラム―」を開催し、あらゆる主体による恊働・連携の可能性を探ろうとしている。
 こうした状況の中、大学においても、産学官の連携あるいは地域貢献の一環として、寄与しうる可能性もある 。例えば、学科や大学単位でのプログラムを創設し 、社会起業家の育成、インターンシップやフィールドワークを通じた連携の拠点づくりをすることのほか、研究室 やセンター 単位で、それらを担うということも可能であろう。このように、地域に存するあらゆる機関が、自らの役割を認識し、それを拠出し連携していくことで、よりより地域社会が形成されていくであろう。

(4)おわりに
 社会起業家という言葉は、近年現れた言葉ではあるが、取材を通じて、市民活動におけるボランティアと経済合理性を追及する営利企業の中間にある概念として、生まれてきた言葉であることを実感した。すなわち、ボランティアのみでは、人は生活することができず、経済活動のみでは企業自身のCSR(社会的責任)を果たしたことにはならない。社会起業家の登場が、その双方のあり方を再検討する契機となり、ひいては、医療や福祉等社会起業家が地域課題と認識し、活動する領域のあり方を再検討する契機にもなろう 。今後も、社会起業家活動に対する取材等を継続した上で、本県の社会起業家が有する課題をより鮮明にし、地域や国家における福祉の担い手とその法制のあり方に関する研究につなげていきたい。

謝辞
本サミットの開催にあたっては、取材に応じてくださった皆さま、スタッフとして関わってくださった皆さま、大学関係者の皆さまに多大なご協力をいただきました。紙面をお借りして、ここに感謝の意を表します。

以上は、「宮崎で活躍する社会起業家の現状と課題 —『社会起業支援サミット2010 in 宮崎』での学生による取材を通じて—」宮崎産業経営大学研究紀要21巻2号の抜粋です。


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